自宅で使う福祉車両の選び方

日々の暮らしをサポートする福祉車両

お年を召したご家族を病院へ送り迎えする際、クルマの乗り降りを辛そうにしていることはありませんか。また、車椅子を使ってらっしゃる方を、シートへと移し、目的地でまた車椅子へ戻すというのもかなりの重労働だと思います。それをサポートしてくれるのが、介護用福祉車両(以下、福祉車両)です。

デイケアサービスの送迎などで見かけることも増えましたが、ご高齢の方や身体に障害をお持ちの方が、楽に乗り降りできる、あるいは、その介助がスムーズにできる機能を備えた車両です。

各メーカーでもラインナップされ、病院や施設で使うような業務用車両だけでなく、家庭で日常的に使えるタイプも増えてきています。現在は軽自動車も高機能化され、選択肢も広がりました。

もちろん、特別な装備や機構がプラスされているために、価格的には一般車よりも高めである点はいたし方ありません。しかし、消費税が非課税(※)になり、税制面での優遇措置や購入の助成制度を利用することも可能です。では、どのような点を見て選べばいいのかを紹介していきましょう。

※シートが回転するだけで、車椅子の収納装置がないものは非課税とはなりません。

福祉車両の種類

福祉車両といっても、機能によっていくつかの種類に分かれます。ご利用になる方の身体能力や介助される方の状況、車椅子のサイズ、普段乗り降りをされる場所の状況、そして予算など、様々なファクターに応じて比較検討できるだけのバリエーションがあります。

シートへの乗降をサポート

1.スライドシートタイプ

助手席または二列目のシートの回転によって、楽な姿勢での乗降をサポートします。どちらかというと、ご自身でも車椅子とシートとの移動が可能な方向けです。電動式・手動式があります。ただし、シートの前後位置の調節やフルリクライニングなど、一部機能が制限されたり利用できない車種もあります。また、シートが回転するだけのタイプは消費税がかかるのでご注意ください。消費税が非課税となるのは、車椅子を収納する装置が備わっているタイプです。

2.リフトアップシートタイプ

助手席または二列目のシートの回転・昇降によって乗降をサポートします。電動でシート自体が90度回転し、クルマの外にせり出して、路面近くまで下降することで乗り降りを助けます。昇降ボタンで座面の高さを変えられるので、車椅子とシート間の移動がスムーズに行えます。ただし乗車時は、シートの前後位置の調節やフルリクライニングなど、一部機能が制限されたり、利用できない車種もあります。二列目のシートがそのまま車椅子になるタイプもあります。

車椅子のままで乗降可能

1.車椅子用スロープタイプ

車椅子からシートへの乗降が難しい方向け。車椅子ごと乗降できるように、後部のゲートに折り畳み式のスロープが設けられています。三列シートのミニバンの場合、二列目か三列目のシートへ乗車する1脚タイプ、二列目と三列目のシートへそれぞれ乗車できる2脚タイプがあります。またスロープは手動式・電動式があり、車高を下げてより乗車しやすくするタイプもあります。電動ウィンチで車椅子をゆっくり引き上げる装置の付いているものや、専用の電動車椅子を装備しているものも増えており、介助者の負担の軽減化が図られています。

2.車椅子用リフトタイプ

車椅子からシートへの乗降が難しい方向け。車椅子ごと乗降できるように、後部のゲートに車椅子を持ち上げる電動リフトが設けられています。例えば、ご自宅が傾斜地に建っていて、目の前が坂道だったりする場合は、安全性の面などから考えて、スロープタイプよりも、リフトタイプのほうがおすすめです。三列シートのミニバンの場合、二列目か三列目のシートへ乗車する1脚タイプと、二列目と三列目のシートへそれぞれ乗車できる2脚タイプがあります。自家用もありますが、価格は高めの設定です。介護施設や病院などで使われる業務用が中心です。

福祉車両の価格

冒頭でも触れましたが、福祉車両は特別な装備や機構を搭載しているため、一般車よりも高めの価格です。車種や機能によっても異なりますが、ベース車に20万~60万円ほどプラスして考えるのが目安です。実例として、各タイプの揃っている日産セレナを例にとってみましょう。

日産 セレナ

X(2WD)ベース車両 248万9400 円(消費税込)
X(2WD)助手席スライドアップシート 280万7000円(消費税 非課税)
X(2WD)セカンドスライドアップシート 291万7000円(消費税 非課税)
X(2WD)チェアキャブ スロープタイプ 車いす1名セカンド仕様 307万3000円(消費税 非課税)
X(2WD)チェアキャブ スロープタイプ 車いす2名仕様 327万3000円(消費税 非課税)
X(2WD)チェアキャブ リフタータイプ 310万円(消費税 非課税)

いずれもメーカー希望小売価格です。別途リサイクル料金10,480円が必要になります。寒冷地仕様などは価格が異なります。詳しくは販売会社にお問い合わせください。福祉車両は一般車両と異なり、受注生産であるため、納車まで数ヵ月かかることも少なくありません。

レンタカーで試してみる

メーカー系のディーラーでは試乗もできますが、本当に限られた時間でしかありません。なおかつ、試乗車がない場合もあります。そこで、レンタカーを数日間借りて試してみることをおすすめします。大手レンタカーチェーンであれば、全車種とはいいませんが、各社の代表的な福祉車両が揃っています。実際に日常的なシーンで使うことができるので、ドライバーや介助者だけでなく、利用する方の感想もすぐわかります。利用者目線で比較検討するには最適です。

カーリースを利用する

購入に踏み切れないという方は、リースという方法もあります。月額およそ2万円(軽自動車)からという手ごろなプランもあり、クルマ自体も様々なタイプ・サイズが揃っています。また、気に入れば、リース契約終了後に購入の形をとることも可能です。

中古車を買うという選択

必要に迫られている方の場合、中古の福祉車両を買うのも一つの選択肢ではあります。新車よりも早く納品でき、価格も抑えられるというメリットは決して無視できません。とはいえ、自動車市場全体での流通数の少なさから、なかなか一般の中古車ディーラーでは見かけないことも事実。また、構造や機構が特別なので、メンテナンスの点で敬遠されがちですし、整備工場でも知識を持った整備士がいることは稀です。

ここは福祉車両を専門に扱っている中古車ディーラーにあたる以外にありません。経験のある整備士がいるはずですから、装備の不具合なども事前に修理できているでしょう。また、スロープやリフトなどの故障の際も安心して任せられるでしょうし、代車の用意もあるはずです。いうまでもなく、一般の中古車ディーラーでは福祉車両の代車はありません。

さらに、実際に乗って確かめてみることも欠かせません。業者を疑うわけではありませんが、不具合や故障個所の見落としがないとはいいきれません。それに、値段やサイズが希望に沿っていたとしても、肝心の車椅子を乗せられない・乗せづらい、車椅子のまま乗ると屋根が低くて圧迫感がある、といった点は実際にそのクルマで確かめてみないことにはわかりません。福祉車両専門の中古車ディーラーは関東全域でも10軒ほどしかないようですが、まずは出向いて実車を細かくチェックしてみましょう。

福祉車両の減免・支援などについて

福祉車両を使用する場合、自動車関連の税金に関して非課税や免除の措置がとられます。

1.購入時の消費税

車椅子を利用される方と車椅子自体を乗せられる車両は、購入時の消費税が非課税になります。車椅子を車両に乗せるための昇降装置とその車椅子を固定するために必要な装置を装備していることが条件です。
シートが回転するだけで、折り畳んだ車椅子の収納装置を持たない車両は対象外です。

2.自動車取得税

身体の不自由な方が乗車するための構造や装置を備えた車両は、自動車取得税が全額免除されます。なお、自動車取得税は地方税のため、都道府県によって、構造や装置に対する基準・条件・解釈が異なります。事前に都道府県税事務所でご確認ください。

3.自動車税・軽自動車税

身体の不自由な方が乗車するための構造や装置を備えた車両は、自動車税・軽自動車税が全額免除されます。自動車取得税と同様、自動車税・軽自動車税も地方税のため、都道府県によって、構造や装置に対する基準・条件・解釈が異なります。事前に都道府県税事務所でご確認ください。

4.その他

以上の他に、〇自動車購入資金の貸付・助成制度 〇有料駐車場料金の割引 〇自動車の燃料費の助成 〇一部カーフェリー料金の割引 〇有料道路通行料金の割引 〇駐車禁止規制適用除外 といった優遇・支援の措置がとられています。こちらも都道府県によって適用範囲の違いや制度の有無があるため、都道府県へお問い合わせください。

また、ナンバープレートを8ナンバーで登録すると、自動車取得税・自動車税の減免制度の適用となります。中古車を購入した場合や一般車両を車椅子での乗車ができるように改造した場合はお忘れなく。こちらも事前に都道府県税事務所でご確認ください。

福祉車両の購入相談ができる窓口は?

繰り返しになりますが、福祉車両が決して安い買い物ではないことはいうまでもありません。相談できたり、アドバイスを受けられる窓口がないだろうか…と思われる方も多いでしょう。しかし、現時点(2017年10月現在)では、そういった対応をしてくれる公的機関はありません。せいぜい、地方税事務所が非課税や減免についての説明をしてくれる程度です。

民間でも相談窓口と呼べるところは皆無ですが、各自動車メーカー系のディーラーでは、福祉車両専門の窓口や常設のショールームを設けており、それぞれのスタッフが介助専門士の資格を持っているところもあります。そのメーカーのクルマのみについては十分に比較検討でき、アドバイスを受けられるとは思います。もちろん、購入時や購入後の非課税・減免といった優遇措置についても知識を持ったスタッフが揃っているので、ワンストップで相談をすることもできるでしょう。

複数のメーカーの車種を候補としているなら、福祉車両専門の中古車ディーラーへ出向くという方法もあります。第三者的に各車種の長所・短所を説明してくれると思います。とはいえ、ビジネスであることは確か。メーカー系や中古車のディーラーに足を運ぶのは、その場で買わされそうでイヤだという方もいらっしゃるでしょう。であれば、まずは資料請求を行って、予算や機能で車種を絞り込んでからという方法をとってもいいと思います。インターネットでユーザーの声が出ているものもありますし、ある程度は異なる角度から比較検討ができるでしょう。また、一般社団法人 全国総合福祉車両協議会のサイトも第三者的な視点で運営されているので、問い合わせてみてもいいでしょう。在庫にもよりますが、条件にあったクルマを検索することもできます。

毎日の暮らしをより快適に便利にしてくれる福祉車両。満足のいく一台を選ばれることをお祈りしています。