労働者派遣法改正案が6月19日の衆院本会議で可決されました

労働者派遣法改正案が19日の衆院本会議で自民、公明両党と次世代の党の賛成多数で可決されました。国会会期は9月27日まで95日間延長されましたので、本国会での成立は確実視されています。以下、簡単に紹介します。

1.全ての労働者派遣事業が許可制に

 特定労働者派遣事業(届出制)と一般労働者派遣事業(許可制)の区別を廃止し、全ての労働者派遣事業が許可制となります。

2.派遣労働者の雇用安定とキャリアアップのための対策

派遣労働者の正社員化を含むキャリアアップ、雇用継続を推進するため、以下の対策が取られます。派遣元の義務規定への違反に対しては、許可の取消も含め厳しく指導されることになります。
①派遣労働者に対する計画的な教育訓練や、希望者へのキャリア・コンサルティングが派遣元に義務付けられます。
②派遣期間終了時の派遣労働者の雇用安定措置※(雇用を継続するための措置)が派遣元に義務付けられます。(3年経過時は義務、1年以上3年未満は努力義務)
※ ア.派遣先への直接雇用の依頼、イ.新たな派遣先の提供、ウ.派遣元での無期雇用、エ.その他安定した雇用の継続を図るために必要な措置

3.より分かりやすい派遣期間規制への見直し

現行制度では、専門業務等のいわゆる「26業務」には期間制限がかからず、その他の業務には、原則1年、最長3年(過半数労働組合等への意見聴取が必要)の期間制限がかかっていましたが、26業務か否かに関わりなく、以下の共通ルールが適用されます。
①派遣先の事業所単位の期間制限
同一の事業所における継続した派遣労働者の受入れは3年を上限とし、それを超えて受け入れるためには、過半数労働組合等(過半数組合がない場合は、従業員の過半数を代表する者)からの意見聴取が必要となりました。意見があった場合には、事業主は対応方針を説明するなど適正な意見聴取の手続きを取る義務があります。
②個人単位の期間制限
派遣先の同一の組織単位(課)における同一の派遣労働者の受入れは上限3年となります。

4.派遣労働者の均衡待遇の強化

派遣元と派遣先双方において、派遣労働者と派遣先の労働者の均衡待遇確保のための義務付けが強化されます。
①派遣元に対しては、同種の業務に従事する派遣先の労働者との均衡を考慮しつつ、賃金決定や教育訓練、福利厚生を実施する現行の配慮義務に加え、その配慮内容の説明義務
②派遣先に対しては、派遣元事業主の求めに応じた同種の業務に従事する派遣先労働者の得る賃金の情報提供、教育訓練、福利厚生施設の利用に関する配慮義務
(注)「均等待遇」は、「同じ働き方をしている場合、賃金などの労働条件で差別しないこと」ですが、「均衡待遇」は、「同種の業務であるが、(業務の処理方法や責任の程度等)働き方が異なる中でバランスを取りながら処遇を決定する」というものです。

5.検討規定

施行3年後の法律見直し検討に加え、正社員と派遣労働者の数の動向等を踏まえ、能力の有効発揮と雇用安定に資する雇用慣行が損なわれるおそれがある場合は速やかに検討を行う、とされています。

施行は、2015(本年)9月1日を予定しています。派遣法改正案は、悪質な業者を排除するためすべての派遣事業を許可制にし、派遣労働者の雇用安定とキャリアアップを図るため、派遣元企業に、派遣労働者への教育訓練やキャリア・コンサルティングの実施や派遣労働者の直接雇用に向けた取り組みを、派遣先に対しても、教育訓練、福利厚生施設の利用に関する配慮義務を求めています。しかし、企業の自主的な取り組みに委ねている部分が多く、専門26業務の派遣社員が契約更新されず、職を失うとの懸念や、正社員に比べて賃金の低い派遣社員が固定化するとの見方もあります。参議院での審議内容、法律改正に基づく厚生労働省の監督能力が注目されます。