人材派遣で仕事探し

定年退職後、正社員として安定収入を確保する必要がない、また臨機応変に自分の時間を活用したいといった場合、派遣社員という選択肢を考えることもできます。正社員ほど組織の枠に縛られずに、自分が積み重ねてきた技術や能力を、必要とされる時と場所で活かしていくという働き方です。

派遣は、直接雇用とは異なる働き方です。

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直接雇用の場合 派遣の場合
A社 労働者と労働契約を結ぶのは(雇用主は) 派遣会社
A社 賃金を支払うのは 派遣会社
A社 社会保険・労働保険の手続を行うのは 派遣会社
A社 勤務先は 派遣先のA社
A社 仕事上の指揮命令を行うのは 派遣先のA社
A社 年次有給休暇を付与するのは 派遣先のA社
A社 休業の際の休業手当を払うのは 派遣会社

派遣では、以下のことが禁止されています。
① 建設業務、港湾運送業務、警備業務、医療関係業務(一部を除く)は派遣禁止業務
です。
② 派遣先となる会社が派遣労働者を指名すること、事前に面接することはできません。
③ 正社員・契約社員・アルバイトなどで前に働いていた会社で、その離職後1年以内に派遣労働者として働くことはできません。

かつてはオフィスの事務職のイメージが強く、また若年者中心で、年を重ねると仕事が無くなる傾向にありましたが、現在では、(中)高年労働者専門の派遣会社も現れました。フレキシブルな就労が可能な派遣労働は中高年労働者の就労に適した制度の一つということで、政府も推進しています。平成26(2014)年では派遣社員約119万人のうち、55歳以上の人が約21万人を占め、その活躍ぶりがうかがえます(「労働力調査詳細集計平成26年(第Ⅱ-1表)」、総務省統計局)。

派遣で働く前

① マージン率や教育訓練などの情報を参考にしましょう。
派遣会社のマージン率や教育訓練に関する取組状況が各派遣会社のホームページ
などで確認できます。
② 派遣会社と労働契約を結ぶ前に、賃金見込み額などの説明を受けましょう。

派遣で働くとき

① 労働条件、派遣料金額等の明示を受けましょう
② 年次有給休暇、育児休業を取ることができます。
③ 働いてトラブルが起こった場合は、派遣会社や派遣先の相談担当者に相談しましょう。

派遣受入期間の制限と労働契約申し込み義務

一部の業務を除き、派遣先で派遣労働者を受け入れることのできる期間には最長3年の制限があります。期間制限を超えてその業務について派遣労働者に仕事をさせる場合などは、派遣先は派遣労働者へ労働契約の申込みをしなければなりません。

紹介予定派遣

派遣先企業に、いずれは正社員(※)として直接雇用されるという見通しを持って派遣される形態です。この形態で働く場合は、最長6ヵ月と期間が決まっています。この期間中に労働者、会社双方が仕事の適性等を見極め、お互いに合意に至った場合に正社員(※)への道が開かれます。正社員(※)のためにお見合い期間的なものと解釈できます。
(※)正社員の他、契約社員の場合があります。

税金と社会保険

派遣労働者も、健康保険や厚生年金に加入が可能ですが、一定の条件を満たす必要があります。

  • 雇用契約が2ヵ月以上である。
  • 1ヵ月の労働日数、および1日あるいは1週間の労働時間が、派遣元における同種の業務を行う通常労働者(派遣労働者を含む)の4分の3以上である。

派遣労働者にも納税義務があります。就業状況など場合によっては、12月に確定申告をしなければならないこともあります。12月に働いた場合は、雇用契約を結んでいる派遣会社で年末調整を受けられるので、その会社の確定申告をする必要はありません。それまでの月(1月から12月まで)に他の派遣会社で働いていた場合は、12月までに働いていたすべての派遣会社から源泉徴収票を発行してもらい現在の派遣会社に提出するか、自分で確定申告をする必要があります。12月に働いた場合も、給与ではなく「報酬」扱いで報酬を得ている場合には、自分で確定申告をしなければなりません。なお、扶養の範囲内で働くことは出来ますが、扶養の希望は、事前に派遣会社にも伝えておき、残業などで超えてしまわないよう注意が必要です。

●派遣労働のメリット

  • 自分の得意分野やキャリアを活かした業務に就ける。
  • 働きたい期間や時間帯を決めて、仕事を探せる。
  • パートやアルバイトとして働くよりも給与水準が高い。
  • 組織のしがらみや人間関係などに縛られにくい。
  • 紹介予定派遣を利用すれば、正規雇用への道も開ける。

●派遣労働のデメリット

  • 希望する条件に合った求人があるとは限らない。
  • 将来にわたる安定・継続した雇用は約束されない。
  • 自分の雇用主と職場の指揮者が異なるため、トラブルが起きたときに即時解決しにくい場合がある。
  • 仕事の評価が賞与・報奨などの形で反映されにくい。

(※)人材(労働者)派遣制度は、2015年9月30日に施行された改正労働者派遣法で
大きく見直されました。詳しくは、厚生労働省HPをご覧ください。

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