公的年金制度④企業年金制度

確定拠出企業年金

確定拠出年金は、拠出する掛金が個人ごとに確定され、掛金とその運用収益との合計額をもとに年金給付額が決定される年金制度で、2001(平成13)年10月に施行された確定拠出年金法で導入されました。加入者が自らの責任において運用の指図を行い、その運用結果に基づいて将来の給付額が変動します。企業型年金と個人型年金があります。
(1)対象者(制度に加入できる者)及び拠出限度額

企業型年金 個人型年金
実施主体 企業型年金規約の承認を受けた企業 国民年金基金連合会
加入できる者 実施企業に勤務する従業員(国民年金第2号被保険者) 1. 自営業者等(農業者年金の被保険者の方、国民年金の保険料を免除されている方を除く)
(国民年金第1号被保険者)
2.企業型年金加入者、厚生年金基金等の加入員等の対象となっていない企業の従業員(国民年金第2号被保険者)
掛金の拠出 事業主が拠出(規約に定めた場合は加入者も拠出可能) 加入者個人が拠出(企業は拠出できない)
拠出限度額 1.厚生年金基金等の確定給付型の年金を実施していない場合
55,000円(月額)
2.厚生年金基金等の確定給付型の年金を実施している場合
27,500円(月額)
1.自営業者等
68,000円(月額)
※ 国民年金基金の限度額と枠を共有
2.企業型年金や厚生年金基金等の確定給付型の
年金を実施していない場合
23,000円(月額)

(2)運用

  1. 運用商品の中から、加入者等自身が運用指図を行います。
  2. 運用商品は、預貯金、公社債、投資信託、株式、信託、保険商品等となっています。
  3. 運用商品を選定・提示する者は、必ず3つ以上の商品を選択肢として提示することとなっています。

(3)離転職の場合等の年金資産の移換

  1. 資産残高(掛金と運用収益の合計額)は個々の加入者等ごとに記録管理されており、資産額等の記録が年1回以上通知されることになっています。
  2. 加入者等が転職した場合等には、退職して国民年金の加入者となった場合等には個人型年金へ、転職した場合は転職先の企業型年金へ資産を移換することができます。

(4)給付

老齢給付金 障害給付金 死亡一時金 脱退一時金
給付 5年以上の有期又は終身年金(規約の規定により一時金の選択可能) 5年以上の有期又は終身年金(規約の規定により一時金の選択可能) 一時金 一時金
受給要件等 原則60歳到達した場合に受給することができる(60歳時点で確定拠出年金への加入者期間が10年に満たない場合は、支給開始年齢を引き伸ばし)
*8年以上10年未満→61歳 6年以上
8年未満→62歳 4年以上
6年未満→63歳 2年以上
4年未満→64歳 1月以上
2年未満→65歳
60歳に到達する前に傷病によって一定以上の障害状態になった加入者が傷病になっている一定期(1年6ヶ月)を経過した場合に受給することができる 加入者が死亡したときにその遺族が資産残高を受給することができる 一定の要件(注)を満たした場合に受給することができる

(5)メリット・デメリット

メリット デメリット
・加入者個人が運用の方法を決めることができる。
・社員の自立意識が高まる。
・経済・投資等への関心が高まる。
・運用が好調であれば年金額が増える。
・年金資産が加入者ごとに管理されるので、各加入者が常に残高を把握できる。
・一定の要件を満たせば、離転職に際して年金資産の持ち運びが可能。
・企業にとっては、掛金の追加負担が生じないので、将来の掛金負担の予測が容易。
・掛金を算定するための複雑な数理計算が不要。
・拠出限度額の範囲で掛金が税控除される。
・投資リスクを各加入者が負うことになる。
・老後に受け取る年金額が事前に確定しない。
・運用するために一定の知識が必要。
・運用が不調であれば年金額が減る。
・原則60歳までに途中引き出しができない。
(退職金の代わりにはならない)
・勤続期間が3年未満の場合には、資産の持ち運びができない可能性がある。
・加入者ごとに記録の管理が必要になるため、管理コストが高くなりやすい。

詳しくは、厚生労働省HPをご参照ください。

確定給付企業年金

あらかじめ将来の給付水準を確定する年金制度で、2002(平成14)年4月に施行された確定給付企業年金法で導入されました。掛金は、運用実績に応じて変動し、運用リスクは企業が負います。規約型年金と基金型年金があります。

規約型企業年金は、事業主が労使の合意の下、年金規約で、信託会社等の外部機関と契約し、母体企業外で年金資金を運用・管理し、年金給付を行うものです。基金型企業年金は、労使の合意により、事業主とは別法人の企業年金基金を設立、そこで年金資金を運用・管理し、年金給付を行うものです。法定給付(法律で給付が義務付けられている)として、老齢給付金と脱退一時金、任意給付(各企業年金が規約で決められる)として、障害給付金と遺族給付金があります。老齢給付は、終身または5年以上にわたり、毎年1回以上定期的に支給するものでなくてはなりません。

詳しくは、厚生労働省HPをご参照ください。

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