特別養護老人ホームに早く入居するためのポイント

介護保険制度の改正で入居が厳しくなっている

基本的に終身入居であり、社会福祉法人や地方自治体が運営する公的な施設であることから、利用料も安く、金銭的な負担を軽減できるため、人気の高い特別養護老人ホーム(以下、特養)。その待機者数は、厚生労働省によれば、2014年3月の段階で52万2,000人にも上っています。

しかし、介護保険制度改正に伴い、2015年4月から特別養護老人ホームへの入居が原則「要介護3以上」に変更。「要介護1・2」の待機者がカウントされなくなったことで待機者数が減少しているという報道もあります。

共同通信では、47都道府県を対象とした特養待機者数調査の結果を2016年11月6日に発表。回答があったのは38道府県ですが、前回(2013年)の調査結果だった約38万5,000人から、今回(2016年)は約22万3,000人と42%も減少していることがわかりました。

もちろん、一部の地域においては、相次いで特養が新設するなど、受け皿の整備もなされてはいますが、実質的には追いついていないのが現状です。

状況で判断されるため、数年待ちは当たり前

しかも、高齢者人口や施設数など、各地方によっても大きな差がありますが、入居までに早くて数か月、一般的には数年程度は待たざるを得ないのが実情。長ければ10年ほどかかるケースも見受けられます。数ヵ月であっても、介護に休みはありません。まして、数年にも及べば、家族の皆さんも心身共に疲れ切ってしまいます。

できるだけ早く入居できるように、と願うのは極めて当然な話。とはいえ、単なる順番待ちではない点も悩ましいところです。

また、入所に際しては、

  • 65歳以上の高齢者
  • 要介護度3以上
  • 伝染病などの疾患がない
  • 長期入院を必要としない

といった条件が挙げられます。施設によって詳細は異なるようですが、少なくともこれらを満たしていることが求められるのはいうまでもありません。

さらに、施設長・介護職員・ケアマネージャー、医師、行政担当者などで構成される入所検討委員会によって、「要介護度」「介護の必要性」「介護者の状況」「待機期間」「資産や収入額」といった総合的な面から、老人福祉法に基づき審査・判断されます。

要介護度が高いほど、そして、介護できる家族や身寄りがいない・少ない、経済的な理由や住居の取り壊しなどで住まいを維持していけない、介護のための場所が住まいに確保できない、老老介護である、介護者も心身の健康を損なっている、といった在宅介護が難しい状態にあるほど、入居が優先されるようになっています。

探す地域の範囲を広げてみるのも有効な方法

では、待機している側としては受け身でいる以外ないのでしょうか。
いえ、決してそんなことはありません。

前述したように順番待ちではありませんが、できるだけ早く申し込むことが肝要です。同じ要介護度・似たような状況なら、先に申し込んでいる方が優先されるのは明らかです。

しかも、一ヵ所しか申し込めないわけではないので、複数の施設を併願しているケースが大半。現在、住んでいる地域にこだわらなければ、広域で募集している施設や地域外からの特別枠を設けている施設に申し込むというのも一つの手です。狭い範囲で選ぶのではなく、せめて隣接する自治体まで範囲を広げてみましょう。

もちろん、全国規模で探すことも可能です。人口や施設数によっては、短期間で入居可能になることもあります。地域外の特別枠の場合は、待機者数が少ないことが多々あるので、入居が早まる可能性も高いようです。加えて、新設の特養も狙い目といえるでしょう。この場合もいち早く申し込みをされることをおすすめします。

ショートステイの利用など、施設側との接点づくりを

その他、こちら側からのアピールも効果があるようです。

まず、ショートステイを利用するなら、申し込んだ特養でサービスを受けるようにしましょう。もちろん、時間的・距離的に勘案した場合、近くの施設に限りますが、これによって、ケアマネージャーをはじめとした施設側とのコミュニケーションが取りやすくなり、在宅介護をこれ以上続けていくのが難しいことや、これまでに受けてきた介護サービスの内容、介護している側の真摯な姿勢などを知ってもらえるようになります。

介護費用が経済的な負担となっている事実を、正直に伝えていくこともお忘れなく。見栄ではなく、腹を割って話をしていくことこそ、必要なのです。

ケアマネージャーをはじめとして、状況を踏まえている人たちが、入所検討委員会にいるかどうかで優先度は大きく違ってきますし、上記のような訴えかけで入居に至った例も決して珍しくはありません。

  • 「できるだけ早く申し込みをする」
  • 「できるだけ広い範囲で施設を選ぶ」
  • 「施設の新設情報を常にチェックする」
  • 「現状が具体的に伝わるように施設側と密接な関係づくりを心がける」

以上を実践すれば、特養への入居は極力スムーズなものとなるはずです。

 

Home 50代のための「働く」+「暮らす」ナビ 6-1 転居・UJIターン 高齢者福祉施設