65歳以上の者にも雇用保険を適用 - 雇用保険法等改正案の閣議決定

政府は、1月29日、雇用保険を65歳以上の者にも適用すること、介護保険
給付金の給付率引上げ等を盛り込んだ雇用保険法等改正案を閣議決定しました。

1.政府は、1月29日、雇用保険法等改正案を閣議決定しました。

この中で、65歳以降新たに雇用される者についても雇用保険の適用対象とするとしています。

これまで、65歳以上の高齢者は、労働生活から引退する者が大半であり、就業を希望する場合でも短時間就労等を希望する者が多数を占め、特に、65歳以降新たにフルタイムの普通勤務に就き、その後離職して再びフルタイムの雇用に就くための求職活動を行う例は極めて少ないとみなされてきました。こうした実態把握に基づき、1984(昭和59)年の改正雇用保険法で、①65歳以後に雇用される者については、雇用保険法の適用除外とされ、②同一の事業主の適用事業に65歳に達した日前から引き続いて雇用されている者を高年齢継続被保険者として、高年齢継続被保険者が失業した場合には、基本手当日額の30日分または50日分の一時金(高年齢求職者給付金)が支給されることになりました。

高年齢求職者給付金の概要
(厚生労働省資料)

しかし、現在の65 歳以上の者の雇用状況をみると、65 歳以上の雇用者数、完全失業者数、ハローワークにおける65 歳以上の新規求職者数、就職件数、高年齢求職者給付金受給者数等どの指標をとっても大幅に増加しています。また、高齢者の就労希望年齢についても、半数近い者が65 歳を超える就労を希望しています。

こうして、失業者のセーフティネットの確保という雇用保険制度本来の要請を踏まえ、65歳以降に新たに雇用される者についても雇用保険の適用対象とし、現在、4 月1 日現在で64 歳以上の者に対する雇用保険料免除規定の廃止するよう、本法案では規定しています。但し、雇用保険法改正を審議した労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会では、65 歳以上の者は多くが中小企業において雇用されていることや、業種によっては大きな影響が生ずる可能性がある業種があることを踏まえ、一定の経過措置を設けるべきと提言しており、本法案では、2030(平成32)年4月1日から廃止としています。

2.介護休業の分割取得を可能にし、介護休業給付の給付率が40%から67%に引き上げあられます。

急速な高齢化が進行する中、介護保険の要介護(要支援)の認定者数は増加傾向にあります。また、家族の介護や看護を理由とする離転職者数は年間約10 万人(2012年就業構造基本調査)となっており、これらへの対処が急務となっています。本法案では、93日の限度(従来同様)内で、対象家族一人につき3回の分割取得を可能にするとともに、介護休業給付の給付率を育児休業給付と同様暫定的に、67%に引き上げることを規定しています。本規定は本年8月1日施行を予定しています。

3.都道府県知事の業種・地域指定の上で、シルバー人材センター(シルバー人材センター連合を含む)の業務が拡大されます。

シルバー人材センターは、地域の家庭・企業・公共団体などから請負契約又は委任契約により仕事を受注し(仕事の内容によっては、無料職業紹介事業や一般労働者派遣事業により実施)、会員の中から適任者を選んで斡旋する国・市町村の補助を受けた公益団体です。斡旋を受けた会員は、その仕事を実施し、仕事の内容と就業実績に応じて「配分金」と呼ばれる報酬(全国平均で月8〜10日就業して3〜5万円)を受け取ります。2014(平成26)年度末の社団法人全国シルバー人材センター事業協会加入数は1304団体、会員数は約72万人です。

さて、シルバー人材センターが取り扱う就業については、現状では、臨時的かつ短期的又は軽易な業務に限定されていますが、将来我が国の必要な労働力が減少していくことが懸念される中で、より長く働きたい高年齢者の就業ニーズ等にも対応することができるよう、取扱業務の拡大が従来から議論されてきました。

しかし、一方で、取扱業務に係る要件の緩和を行ったことにより、労働者保護を害することになったり、民業を不当に圧迫することや地域の労働市場へ重大な影響を及ぼすようなことになっても問題です。

こうして、2015年12月25日の労働政策審議会建議では、
①要件緩和は、シルバー人材センターの業務のうち、就業者の適切な保護の観点から、職業紹介事業及び労働者派遣事業に限って実施すること
②要件緩和の実施は、シルバー人材センターの指定・監督権限を有する都道府県知事が、厚生労働省が定める基準に適合すると認められる場合に、対象となる業務の範囲 や地域を指定することにより可能とすること
③都道府県知事が、要件緩和を実施する地域等の指定を行うに当たっては、要件緩和を行おうとする業務に関する地域の関係者の意見をあらかじめ聴取するとともに、広域的な雇用情勢や労働力需給への影響等の観点から国の関与を必要とすること
④要件緩和を実施する地域等の指定は解除することができるものとすること
という条件がつきました。

今回の雇用保険法改正では、この2015年12月建議どおりの規定も含まれており、本規定は、2017(平29)年1月施行となっています。