田舎暮らしの詩 ~長野県伊那市より VOL.17~ お金がつなぐ人と人

大山千佳

大自然のふところ、伊那谷からお届けしています。

伊那谷

職業

移住前 信託銀行 勤務
移住後 あがっとソロバン&学習塾 主宰

氏名

大山千佳(おおやまちか)

年齢

51歳

略歴

東京都出身。都立日比谷高校、青山学院女子短期大学卒。
信託銀行に26年間勤務し、事務・営業・本部企画に従事。
現在は、中央アルプスと南アルプスに囲まれた伊那谷の大自然の中、
小学生にソロバン、中学生に数学・英語を教える学習塾を主宰。

ターン状況

出身〜38歳 東京都品川区
38歳~47歳 東京都大田区
47歳〜 長野県伊那市

開業資金

1万円(教科書代)

ターンの理由

東京に住み、毎日朝から夜遅くまで仕事しながら、自分の本当の幸せは何か模索していました。
伊那で開催する染め物や味噌づくりのワークショップに通うようになり、風土・季節にそった生き方をしている移住者たちと知り合い、1年かけて移住を決意しました。

今の暮らしで気に入っていること

朝、鳥の鳴き声で目覚めること。
採れたての美味しい野菜を食べられること。


2月も半ばを過ぎ、かわいらしい福寿草の花が庭に咲きはじめました。
伊那に移住してから、春を告げるこの花が咲くと気になることがあります。

そう、確定申告の季節です。
今まさに、友人からの記帳代行の依頼を受けて、領収書の山と格闘中です。

銀行員時代は、お金の知識がある人が常に周りにいる環境にいました。
退職してから気づいたのは、世の中には、お金の計算はもとより、お金について考えることが苦手な人が多いことです。

ファイナンシャルプランナーとしても活動しているわたしのところには、
お金に関する様々なご相談やご依頼が飛び込んできます。

先日、横浜在住の友人から、自治会の懇親旅行に誘われました。
横浜から益子への日帰り旅行です。
友人は懇親旅行の幹事、わたしは会計係になりました。

あれ?
旅行を楽しむつもりだったのに……。

集合場所では、「バスの乗降口に立って、参加者の方々の集金をしてね。」と言われ、
発車後は、友人がガイドをしている横で、お金を数えていました(笑)

結局、食事代、バス代の精算をし、伊那に戻ってから会計報告を作成し任務完了。
もちろん、旅先の益子では、目一杯楽しんできました。

絶妙な企画力と実行力があるこの友人も、お金に関することが苦手なようです。
お金に強いわたしだからこそ、役に立てることもあるのだなぁと感じたできごとです。

伊那市高遠にある「民泊よしよし」では、銀行で企画の仕事をしていた経験も役立てることができました。

4年前に「よしよし」で、「産前産後のお母さんケアをしよう」というプロジェクトが立ち上がったとき、まだ東京で暮らしていたわたしも、打合わせに参加させていただきました。


なぜそれをやりたいのか。
どういう場所にしたいのか。
そのためには、どんな設備が必要か。
資金はいくらぐらい必要か。
その資金をどうやって集めるのか。
話し合いは明け方まで続き、実りのあるものでした。

宿泊にいらっしゃったお客さまに提供するサービスに見合った料金設定や、
暮らしていくために必要なお金についてなど、
わたしは、「民泊よしよし」の運営に関するお金のことを相談していただきました。

その後、資金集めから改築工事を経て、無事に「民泊よしよし」はリニューアルオープン。

リニューアルオープンの時期と、わたしの移住時期がちょうど重なったこともあり、
女将のみかりんとは、お互いの夢を語り合う大切な友人になりました。

「お金の相談を通じて、その人の人生と向き合う」
銀行員時代から心がけていたことです。
田舎暮らしの中でも、お金という切り口から、ひとの人生と向き合う場面をいただいています。

長い間続けてきた銀行での仕事は、まったく別の世界に移ってからも、
わたしが暮らしていく上で、本当に役に立っています。

お金の相談、天職なのかもしれない。

桜で名高い高遠城址公園のある高遠へお越しの際には、ぜひ「民泊よしよし」をチェックしてみてください。
地産池消で、身体にやさしいお料理をいただけます。
女将は料理上手で、醤油も味噌も手作り。
自然とつながり、人とつながることを大切に、お客さまを自分の家族としてお迎えしたい、そんな女将の思いがひしひしと伝わってきます。

☞ 田舎暮らしの詩 VOL.1 から読む