田舎暮らしの詩 ~長野県伊那市より VOL.19~ 田舎で暮らすということ

大山千佳

大自然のふところ、伊那谷からお届けしています。

伊那谷

職業

移住前 信託銀行 勤務
移住後 あがっとソロバン&学習塾 主宰

氏名

大山千佳(おおやまちか)

年齢

51歳

略歴

東京都出身。都立日比谷高校、青山学院女子短期大学卒。
信託銀行に26年間勤務し、事務・営業・本部企画に従事。
現在は、中央アルプスと南アルプスに囲まれた伊那谷の大自然の中、
小学生にソロバン、中学生に数学・英語を教える学習塾を主宰。

ターン状況

出身〜38歳 東京都品川区
38歳~47歳 東京都大田区
47歳〜 長野県伊那市

開業資金

1万円(教科書代)

ターンの理由

東京に住み、毎日朝から夜遅くまで仕事しながら、自分の本当の幸せは何か模索していました。
伊那で開催する染め物や味噌づくりのワークショップに通うようになり、風土・季節にそった生き方をしている移住者たちと知り合い、1年かけて移住を決意しました。

今の暮らしで気に入っていること

朝、鳥の鳴き声で目覚めること。
採れたての美味しい野菜を食べられること。


伊那に移住して4年、今、住んでいる家に越してきて2年が経ちました。

田舎暮らしの詩の連載を始めて丸1年。
季節は巡り、田植えの時期。野菜の苗が元気に育っています、

2年前、今の家に引っ越してきた時には、庭中にヤエムグラ(八重葎)がはびこっていました。

―八重葎(やへむぐら) しげれる宿の さびしきに 人こそ見えね 秋は来にけり(百人一首)

現代語訳:
八重葎というつる草が何重にも重なって生い茂っている荒れ寂れた家。
訪れる人は誰もいないが、それでも秋はやってくるのだなあ。

という歌を思い出しては、「本当にこの地で暮らしていけるのだろうか」と、途方に暮れたこともありました。また、「つる草があるうちは、庭に草木は植えられない」と近所の方に教えていただき、つる草をひたすら抜き続けました。
翌年、ふきのとうが、所せましと萌え出で、古木の花桃が咲き乱れる様子を初めて見て、なんていい土地なんだろうと気付きました。

ヤエムグラもほとんどなくなり、やっと、コデマリやツツジ、レンギョウ、ブルーベリー、アヤメを植えることができたのですが、まだ根がはっていなかったので、それぞれあまり存在感がありませんでした。

そして、今年、見事に咲いたコデマリやツツジたち。枝ぶりも立派になり、アヤメは数が倍になりました。ワイルドストロベリーもこんなに大きくなりました。

同様に、わたしも少しずつこの地に根を生やすことができてきたようです。

早く、集落の方々の仲間入りがしたくで、昨年5月の農事祭には、フラ(ダンス)のCDを持っていき、飛び入りで踊って見せて、みなさんにびっくりされたのですが、今年は、主催の方々から前もって踊りのオファーをいただき、以前習っていたお神楽の鈴を鳴らし、フラを躍らせていただきました。

たくさんの拍手をいただき、お礼までいっていただけて、とても感動しました。
組長のお仕事で、配布のお仕事や集金をさせていただき、みなさんともコミュニケーションも格段に増えました。
さらに環境保全委員会からもお誘いがあり、総会に行ってみると、広報係の副役員に名前が載っていてびっくりしたこともありました。

自分がみなさんの役の立てるところで、自分自身を発揮しようと努力してきたことで、少しずつ地域の中に入っていけたようです。

「田舎は閉鎖的で、よそ者に冷たい」という話をよく聞きますが、こちらがみなさんのことをわからないように、みなさんも私のことがわからないだけなのです。

「知ろうとする努力と知ってもらう努力」
これは、移住した人に限らず、友人同士でも家庭の中でも同じことだと思います。

「都会では、もうすぐ50歳。今、動かなければ後がない。もう若くはないのだから。」
と焦っていましたが、田舎に来てみれば、70歳、80歳の方々が、現役で働いていて、私はまだまだ「若い衆」とみられています。

若いからこそ飛び込めた田舎暮らし。
でも年齢なんて、主観的なもので、意識を変えればどうとでも捉えられるのです。
だから、50歳でも何歳でもしたいことをあきらめる必要はない。
自分が興味あること、したいと思っていたことをどんどんしていけばいいのです。

今、私の周りには、80代、90代でも元気で生き生きしている方々がたくさんいらっしゃいます。私が80歳になるころには、110歳、120歳の方がたくさん生きている世の中になっているでしょう。
50代は、定年前やゴール間近の世代ではなく、まだまだこれから自分の望む生き方を実行していける年齢です。まだまだ先は長いのです。

わたしたちには、昔からの伝統を大事にしながら新しい世の中を切り拓き、次世代に伝えていく役割があります。
そう思えるようになったのは、移住してたくさんの方にお会いしたおかげです。

都会で、田舎で、日本で、外国で。
みんな地球の上のこと。この大きな環の中で手をとりあって、
各々が豊かで幸せな世界を創造していく。
そう願って、ひらくナビ「田舎暮らしの詩~長野県伊那市より~」を終わりにしようと思います。

一年間、ありがとうございました。

これからは、HPで発信していきますので、引き続きよろしくお願いします。

「変わっても大丈夫!ライフチェンジ応援。都会のキャリアウーマンから田舎暮らしの移住者へ」HP