日常に潜む情報通信技術の罠 -同音異義語:スキップ-

先月触れた左膝蓋はまだひびが入ったままですが、コルセットはほぼ4週間の6月24日に外してよいことになり、7月8日診療終了となりました。まだ1.5か月は気を付けてという条件付きではありますが。
ということで今月はまた同音異義語のシリーズに戻り、「スキップ」を取り上げたいと存じます。

(飛び跳ねる)スキップ

図1 いらすとやのスキップのイラスト

スキップと言ったら、図1のような片足ずつ交互に飛び跳ねるものです。まだ膝のひびが残っている筆者にはできないものですが、怪我する前には、孫たちと、一緒に歌いながらスキップしたりしていました。

(画面上の)スキップ

スキップをとりあげようと思ったきっかけは、2歳の孫との会話がきっかけです。
今どきの子は、TVやPADなどでYouTubeなどをよく見ています。孫の家で一緒に留守番をしていたとき、公園までスキップしたりして遊んで、そのあとTVでYouTubeを見ていました。YouTubeには合間で広告がはいります。広告に変わった時、孫が「スキップ」と言ったのです。

図2 YouTubeの「広告をスキップ」のスクリーン表示

まさか2歳の孫に、広告表示のスキップを要求されようと思っていなかったので、なぜここで飛び跳ねるスキップをするのか、何かのゲームなのかと一瞬戸惑いました。が、孫はTVの画面を指さしています。画面の右下には図2のように「広告をスキップ」とボタン表示が出ています。

PCやPADであれば、この表示の上にカーソルを移動し、マウスでクリックすればよいわけです。筆者の自宅のTVのリモコンには、この「スキップボタン」がついているので、TVではいつもそれを押して、広告をスキップしていました。この「スキップボタン」は、CDやレコードなどで次の曲に飛ぶのがスキップだった名残で、録画映像を区切りごとに飛ばしてみるための機能なので、少し特殊なボタンです。
そして、孫の家のTVリモコンにはこれに該当するボタンがありません。「早送りボタン」などいろいろ押してみましたが駄目でした。のちに帰宅した娘に確認したところ、「決定ボタン」でよいとのことでした。孫の世代では、YouTubeはもはやTVでみるものになっているという文化の違いを痛感した次第です。次に会う時には、おばあちゃんにはできないからと、自分でさっさとリモコン片手にスキップ操作をするのではないかとひそかに恐れています。

録画映像を2倍速でかつ広告をスキップすると、1時間番組でも(60-15)/2=22.5分で見ることができます。最近はこの視聴スタイルにはまっています。(そこまでして視聴しなくてもよいのにと自分でも思うのですが。)
動画をスキップしていると、プレゼンテーションの際に自分の不手際や、前のプレゼンターが長引いて時間が足りなくなった時、あまり意識せずに「このスライドはスキップします」とよく言っていることにも気づきました。

(プログラムでの)スキップ


最近は不勉強でプログラムを全く書いていませんが、プログラミングでは「処理をスキップする」という言い方があることを思い出しました。同じ処理を繰り返して実行(for文やwhile文などのループ処理)するとき、ある特定の条件のときのみ、処理をせずに、次の繰り返しに行くのが「処理をスキップする」です。

(電波での)スキップゾーン

スキップそのままの同音異義語ということではないのですが、電波の世界にはスキップゾーンというものが存在します。30MHz以下の周波数の電波は、地表に沿って届くもの(地上波)と、上空の電離層に反射して遠方に届くもの(電離層反射波)があります。電離層反射波は電離層に反射し、そのあと地上に反射しを、繰り返します。地上波が届く地点と最初に電離層反射波が最初に届く地点との間は電波が届かないので、スキップゾーンと呼ばれます。電波が届かずスキップされるということで不感地帯とも呼ばれます。


調べてみると分野毎にいろいろなスキップがあるようです。
ちなみにカーリングでは主将のことをスキップと呼びますが、これはskipper(船長、艦長)からきているということです。

図書館から借りてきた本もストーリーがなかなか展開しないとかなりのページをスキップしています。スキップはこれからますます増えそうです。 

(2023年7月)


筆者紹介
土井 美和子氏

国立研究開発法人情報通信研究機構 監事(非常勤)
東北大学 理事(非常勤)
奈良先端科学技術大学院大学 理事(非常勤)
株式会社三越伊勢丹ホールディングス 取締役(社外)
株式会社SUBARU 取締役(社外)
日本特殊陶業株式会社 取締役(社外)

1979年東京大学工学系修士修了。博士(学術)。同年東京芝浦電気株式会社(現㈱東芝)総合研究所(現研究開発センター)入社。博士(工学)(東京大学)。以来、東芝にて35年以上にわたり、「ヒューマンインタフェース」を専門分野とし、日本語ワープロ、機械翻訳、電子出版、CG、VR、ジェスチャインタフェース、道案内サービス、ウェアラブルコンピュータ、ネットワークロボットの研究開発に従事。